作品名 | キン肉マン |
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ジャンル | コミック、アニメ他 |
原作者 | ゆでたまご |
出版元 | 集英社(ジャンプコミックス) |
発行初年 | 1979年 |
現在の20代半ば以上の方ならおそらく知らない人はいないといえるくらい、社会現象にまでなった作品「キン肉マン」。この作品についてはアニメや消しゴムなど皆様それぞれの思い出があるかと思いますが、鉄道ネタとして印象深いのは、なんといっても超人オリンピック・ザ・ビッグファイト第3次予選(コミックス単行本7巻掲載、アニメにも登場)で出てくる「新幹線アタック」に尽きます。
この競技は超人たちが東京駅から新幹線の車両を博多方向に向かって勢いよく押して踏み切り線で放し、その惰性で車両がどこまで走るかを競うというもので、遠くまで走らせたモンほど偉いというわけです。
なお、「2回脱線」「踏み切り線を越える」「一度手から離れた車両に触れる」は失格となります。
原作本をもとに検証していきます。
まず車両ですが、0系の大窓先頭車1両です。作品発表当時は東北・上越の200系も東海道・山陽の100系も登場前で「新幹線=0系」が当然でしたからね。小窓仕様の0系1000番台は発表当時すでに量産されてましたが、車両を壊されるかもしれないような競技に最新車両なんか使わないだろうし。ちなみに原作では車両はパンタ付先頭車(22形)になっています。本当は博多向き先頭車はパンタなし(21形)なんですけどね。まあ1両だけだから方転してたりしてね(笑)。ATCの機能は当然止めてるんだろうから方向も何も関係ないだろうしね。
さて最初に新幹線を押したフランス代表タイルマン、博多まで走らせたんですが、あの1000km以上ある距離を途中一切力行なしで惰性だけで走らせるなんて…いったい初速はいくらくらい?どなたかヒマな方で力学専門書をお持ちの方は計算してくださいな(オイ)。他にも新大阪とか小倉とか岡山とか、超人の皆さんすごい記録ばかりで…まあ百歩譲って超人の力ならそこまで行けるような速度を作り出すことは可能だったとしても…そんな速度だったら台車が蛇行動を起こしてどこかで脱線しちゃうんじゃないのかなあ。
あっ、でも「脱線2回で失格」になるんだから、一流超人たちは蛇行動が起こっても脱線しない走らせ方でも心得ているのか?蛇行動を防ぐ技術や方法があるのは知ってる(注:技術の中身は詳しく知りません。専門家ではないので)けど、蛇行動が起こったときに車両の制御もなしにそのまま走って脱線しない技術なんか聞いたこともないけどなあ。それとも国鉄がものすごい蛇行動防止装置を開発して取り付けたとか?そもそも作品中では車両が脱線するシーンはないけど。
なお作品中では博多駅がなぜか頭端式ホームになっていますが、実際には博多駅は2面4線の通り抜け式となっており、博多南駅(発表当時は未開業)や博多総合車両所へと線路が延びています。タイルマンみたいに車止めを突破してホームに突っ込むくらいの勢いなら実際にはたぶん博多総合車両所まで突っ込んで奥の壁に衝突して止まったことでしょう(笑)
あの「新幹線サマーファミリーフェスタ」で試乗列車の乗り場になる場所のあたりでしょうかね。
明治時代には人がちっちゃな木造客車を1人で押す人車軌道なんてのがあったといいますが、車体全体に鋼やアルミを用い、頑丈な構体と台枠で支持された現代の鉄道車両はボブ・サップでも曙でも朝青龍でも1人の人力で動かすのは(たとえウルフマンみたいに東京駅から有楽町まででも)全くありえない、不可能な話でして、現場公開のイベントで大人数でワイワイやりながら綱引きしたりするわけです。
原作発表当時は新幹線は東京〜博多間のルートだけだったし、車両も0系こそが唯一無二の営業用新幹線車両の系列でした(ホントですよ。今の10代の皆さんには信じがたいことなんでしょうけど)が、その後東北、上越、長野といった新ルートが開通しましたし、山陽新幹線も現在では博多から先の博多南まで別線の在来線扱いながら営業をしているのはご存知の通りです(実際には線路が延長されたわけではありませんが、地元民でも鉄道ファンでもない方から見ればあたかも延長されたように映りますよね)。そして博多南からさらに南、九州の地に伸びる最新の新幹線といえば九州新幹線。これはご存知のように現在は新八代〜鹿児島中央間の部分開業ですが、近い将来には博多〜新八代間も開通して東海道・山陽新幹線と結ばれるといわれています。
さあ、次世代の超人たちよ、めざせ鹿児島中央!